きっともう恋じゃない。



「そういえば、かおる今度の誕生日は何がほしい?」


今食べてるお菓子ってことにしてもいいのだけど。

こういう話には食いつきのいい薫は勢いよく顔を上げた。


「タブレット」

「却下。お母さんたちに怒られるのわたしじゃん」


それ以前に、わたしも持っていないものを薫にあげようなんて思わない。高いし。


「パソコン」

「リビングにあるよ」

「姉ちゃんだけ自分のやつ持っててズルい」


出た。姉ちゃんだけズルい。

高校の授業で必要だったとか、無気力だったころに唯一興味を持ったのがパソコンだったとか、色々理由はあるけど、たとえ受験が終わったって薫に自分用のパソコンは買ってもらえないと思う。

わたしが使っていないときなら好きにしていいよと言ったって、それでは納得しないんだろうし。


「携帯!」

「それはお父さんに言ってよ」


薫が必死な理由はなんとなくわかってる。

生意気にも、とは言わないけど、薫には彼女がいるから。

さすがにわたしの携帯で連絡を取り合ってはいないし、たまに家の固定電話で話している姿も見かける。


もどかしい気持ちはわかる。

でもそれをわたしに言われても困る。


リクエストがないのから、なにかふたりのためになることかものをあげたい。

そんな老婆心が捨て切れないのも、結局は弟が可愛いからなんだろうな。