きっともう恋じゃない。



「どのモンスターが好き?」


配信日からログインを欠かさないほどのめり込んでいると思われているのかもしれない。

キラキラと輝く瞳に圧倒されてうんともすんとも言えずにいると、横にいた別の男の子が振り向く。


「イブキ。おまえ、誰彼構わず絡むのやめろ」

「ええー。だって、配信日からバテモンやってるって相当だぞ。絶対仲良くなれる」


わたしではなくて薫となら仲良くなれるかもしれないね。


この教室にいるということは同学年のはずなのに、ふたりとも見知らぬ顔をしている。

普段あまり人の顔を見ていないし、雰囲気で男女のちがいを感じ取るくらいしかしていないから、きっとわたしが知らないだけなんだろうな。

そんなことを考えていたら、案の定ふたりはわたしを知っていたようで。


「久野さんだっけ。ごめんな、いきなり話しかけて」

「そう、久野さん! 久野和華ちゃんな。思い出した」


控え目とはいえ同じく話しかけているのには変わりない男の子が矢澤くん。

さんなのかちゃんなのかはっきりしてほしいバテモン好きの方が新見伊吹くん。


よくよく話を聞いてみると、去年のグループディスカッションで一度同じ班になったことがあるらしい。

スクーリングはただでさえ気を張っているのにディスカッションだなんて、きっと息をしているだけで精一杯だったのだろう。

活動の内容もグループのメンバーも、ぼんやりとさえ覚えていなかった。