きっともう恋じゃない。



お母さんに学校の近くまで送ってもらって教室へと向かう。

他の子と鉢合わせないように早めに着いたこともあってか、教室には男の子がふたりしかいなかった。


いつもは席の指定がないのに、今日は到着順で詰めて座るようにと提示があったから、男の子たちの後ろに座る。


学校自体が小さなこともあって、手狭な教室しかないから仕方ないのだけど、前の席との距離がかなり近い。

二人がけの机だからこのあとに来る子がわたしの隣に座ることになる。

せめて女の子であれと願いながら携帯を触っていると、ふと視線に気付く。


「それさあ」

「え……」

「バテモンじゃん」


前の席に座っていた男の子が体ごと後ろを振り向いてわたしの手元を覗き込んでいた。

バテモン、と言われて改めて画面に目を向けると、ログインボーナスの文字がデカデカと表示されている。


「ログイン日数407……ってことは配信されたときからやってるんだな。しかもそれ、連続ボーナスだし、途切れたことねえの?」

「500日で限定モンスターがもらえるんじゃなかったっけ……」

「そう! そうなんだよ、だから俺も毎日開いてるよ」


聞いてもいないのに眼前に突きつけられた携帯の画面にバテモンが開かれる。

同じログイン日数であることに興奮してあれやこれやとパーティ編成や攻略具合を見せつけられるけど、このゲームをわたしはよく知らない。

薫が勝手に入れたゲームで、わたしに任されたのは毎日のログインだけだ。

自分の携帯を持ったら引き継ぐからと言われているし、操作もいまいちわかっていない。