「可愛かったな~」
もう一度花莉に聞こえるように言ってみる。
花莉は口をぱくぱくと動かすだけで動かない。
今ならキスしても平気そう。
彼女のほうに顔を近づけて、唇にキス。
触れるだけですぐに離れると、花莉はやっと動いて赤い顔で俺の胸を叩く。
「きかなかったことにして…!!」
俺を叩くその手には力が込められてねぇから全然痛くない。
「やだ」
「忘れて…っ!!」
「無理。あんな可愛いの忘れられるわけねぇじゃん」
「…忘れて!!」
「じゃあもう1回うたって?そしたら忘れるかもしれなくもない」
「!?」
曖昧な返事。
それを聞いた花莉は俺の背中を押してソファから落とそうとする。
「早くお風呂入ってきて…!!」
「わかったから。あとでうたって?」
「はちみつ入りアップルティーの歌だったらいいよ…!!」
なんでその歌はいいのかわからないけど…
花莉の歌はききたいから俺は立ち上がって、脱衣所へと大人しく向かった。



