俺は大きく息を吸って、脱衣所の扉を2回ノックした。
すると、ちょうどシャワーの音が止まって。
花莉にノックの音が届いたかと思ってじっと待っていたら、扉の向こうから聞こえてきたのは彼女の返事ではなく…
歌声。
決して大きな声ではない。
小さな声だけど、確かに聞こえてくる。
…可愛い。
花莉の歌声なんてレア。本当にたまーに鼻歌とか、アップルティーの謎の歌とかはうたってるけど。
思わずその声に聞き入って……はっと我に返る。
これじゃ、ただの変態野郎になっちまう。
花莉の下着を手に持って、脱衣所の前に立っているんだから。
俺はもう一度大きく息を吸って、扉を2回再びノック。
すると、歌声は止まった。
…聞こえたんだろう、か。
「し、詩優…?」
扉の向こうから聞こえてきた彼女の声。
俺は暴れ出す心臓を抑えて口を開いた。



