そう思い脱衣所の扉の前まで足を進めて手をかける──────が、問題が発生。




ここの部屋の浴室がガラス張りだということ。




湯気でガラスが曇ることが多いが、ぬるい温度のお湯を使えばガラスが曇らないこともある。




ガラスが曇らなければ当然、浴室にいる花莉は丸見え。
そんな状況でこれを届ければ、何も知らない花莉からしたら俺はただの約束を破った変態野郎だ。




ここに引っ越して花莉とした約束。
浴室がガラス張りだから、“花莉がいいって言うまで絶対覗かない”ってちゃんと約束した。





自分からした約束を自分で破るのは最低だし

もし、約束を破れば花莉を傷つけて泣かせてしまうかもしれない。




…ちゃんとノックして、これが落ちていたことを伝えよう。それでこれを届けて。




平和的解決にしよう。