よく眠れなかった……。


重い瞼を開ければ、室内が(ほの)明るい。

首を動かして時計を見ると、6時10分を少し過ぎている。

いつもなら30分の目覚ましが鳴るまで起きられないのに

昨日の和泉くんの言葉が相当効いているようだ。


『諦めなよ』


何度目か分からないほどの言葉が耳の奥で(ささや)く。


言われなくても分かってる。

先輩の眼中にないことぐらい。

――でも…。


「諦められないんだよ…」


頭の中の声をかき消すように

ポツリと呟いた。