なぜか無能力の私に、世界の行く末が委ねられました。

 そして、もう1つの疑問。

 それは、「なぜ勇者は、ドラゴンに対して能力を使わなかったのか」ということだ。

 初めから、ドラゴンには能力が効かないと分かっていたのか。

 それとも、そもそも“能力を使えない”人間だったのか。

 私は、後者の方がより有力だと考える。

 ドラゴンと対峙(たいじ)したのは、勇者が初めてだったはずだ。

 それなのに、能力が効かないと分かっている。

 おかしいとしか思えない。

 それに、勇者が“無能力”の人間だったからこそ、一振りの剣でドラゴンと戦おうと考えたのではないか。

 今となっては、知る術はない。



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