有 料 彼 氏



瑠々子って、そういう人間だったんだ。


傷つきはしなかった。傷つくわけもなかった。なかったけれど、へぇ、とばかり思った。


いまここで、あたしに彼氏ができたことでも言おうか。


瑠々子は、なんと思うだろう。


口を開き、息を吸う。


吐きながら言葉をのせようとすると、


「──……っ!?」


息が、止まった。空気が存在しなくなったかのように、ぴたり。


崩れ落ちる。床と膝が、触れ合う。


胸に抱いていた本が音をたてたけれど、息を吸うことにすべてがいく。


「っ、や……っぱり、ともちゃん……!」

「……はは」


空気が蘇り、浅い呼吸を繰り返すあたしに向かって、朋実が低く笑った。ように思えた。


震えた声が漏れただけだろ。


そう信じ込ませる。


図書館だろうと、廊下だろうと、何も気にせずに……走ってその場を去った。