有 料 彼 氏



「ゆずちゃん……」


瑠々子が何度も、あたしの名前を呼ぶ。もうずっとこんな調子だ。


口元で震える、彼女の指先。深爪。


はっとして、自分の爪を見る。


あたしも、深爪気味……まさか。


「瑠々子が最初に、この本に触れたんでしょ」


彼女はわかりやすく困惑を浮かべた。


「あたしたち3人で来るよりも前に」


儀式に必要だから、爪を切ったんでしょう。深く。深く。


瑠々子の爪は、もっと綺麗だったはず。たしか。


ネイルが綺麗な朋実の幼なじみだ、綺麗じゃないわけ。


それに、瑠々子は埃をはたいたようだったけれど、あたしたちは埃を見ていない。


埃を被っている、その恐怖を植えつけて、気を逸らしたんじゃない?


自分は使っていない、そう見せたんじゃない?