有 料 彼 氏





ガクンッ


彼の首が、90度、倒れてくる。


「ひっ、」

「……ご用件は」


機械音声のような掠れ方。低い声。低すぎる、声。


彼から発せられたものではないと、直感で感じる。


「……ご用件は」


繰り返され、そうだ、と思い返す。


1万円を支払えば、叶えてくれるんだっけ。


「どんなことでも?」

「はい」


そもそもあたし、1万円なんてもっているのかな。


鞄を漁ると、内ポケットに、3万円が裸で突っ込まれていた。


冷や汗に気がつきながらも、記憶がないながらも、これはあたしのものだと信じ込む。