夏色の初恋を君にあげる(野いちごジュニア文庫版)



「凛子さんから、俺と同じ匂いがする」



思いがけない言葉に、心臓爆発寸前、動けなくなっていた私はぱちくりと目を瞬かせた。



「え?」



呟きながら、はっとして振り返る。



「あ! 本当だ……!」



分かった。由良くんに対する、謎の安心感の正体が。

――香りだ。



今日、午前中に体育があったから、お気に入りの柑橘系の制汗スプレーを使ったのだけれど、すぐそこに立つ由良くんからも同じ香りがする。



すると、由良くんは目を細めてくすりと笑った。



「あれ、いい匂いですよね。俺、好き」



至近距離で向けられた甘い笑顔の威力に、思わず言葉を失ってしまう。


どうやら由良くんの笑顔は、心臓に毒みたいだ。