夏色の初恋を君にあげる(野いちごジュニア文庫版)



QRコードを読み込み、私のスマホに由良くんの名前が登録された。


嬉しさのあまり由良くんの名前を訳もなく見つめていると。



「よし、できた。じゃあね」



そんな声が落ちてきて、私は顔を上げた。



「あれ、電車乗らないの?」



「ごめん、ちょっとうそつきました」



「え?」



「また今度。気をつけて」



さらりとそう言って、由良くんが踵を返して歩いて行く。



もしかして、私を送るためにうそをついてわざわざここまで来てくれたのだろうか――。

そう気づいたら、胸の奥がじんと熱くなって。



「由良くん! ありがとうっ!」



遠ざかっていく背中に向かって、精いっぱいの大声を張りあげる。



すると、人並みの中、由良くんが足を止めてこちらを振り返った。



「はは、凛子さんの声、届いた」



両手で丸を作り、眉を下げてくしゃっと笑う由良くん。


そのあどけない笑顔にきゅんと胸が高鳴ったのは言うまでもない。



由良くんといる時間の分だけ好きが大きくなっていく。


胸の中に淡く広がる恋心を私は大切にそっと抱きしめた。