夏色の初恋を君にあげる(野いちごジュニア文庫版)



言われてみれば、たしかに遠くから眺めていた頃、由良くんの笑ったところは見たことがなかったかもしれない。


いつもクールで、表情を崩さない印象があった。



でもまさか笑うのが苦手だったとは驚きだ。



「由良くん、よく笑ってくれるから分からなかった」



「なんででしょうね。凛子さんの前では気が抜けて、ふにゃふにゃになる」



カウンターに肘を突いた由良くんが、眉を下げてくしゃりと苦笑した。



「凛子さんパワーかな」



「……っ」



私だけ特別だと、そう言われているんじゃないかって、そんなおこがましい錯覚を起こしてしまいそうになる。



反則すぎるよ、由良くん……。


こっちの気も知らず振りまわしてくる彼を心の中で責めながら、正直に赤くなってしまった顔を慌てて隠した。