夏色の初恋を君にあげる(野いちごジュニア文庫版)





「人はいないな」



図書室のドアを開け中を確認した由良くんが、ぼそっとひとりごちる。



そして、本棚の影に私を座らせると、自分もその横に腰をおろした。



「これ、飲みます?」



そう言って由良くんがポケットから取り出したのは、校内自販機で売られている紙パックのいちごミルク。



「え?」



「買ってだいぶ経っちゃったから、冷たくはないけど」



「でも由良くんのじゃ……」



「お札くずしたくて買っただけだから、飲んでもらえるとありがたいやつです」



本当なのか、私に気後れさせないためのうそなのかは分からなかったけど、私は由良くんの言葉に甘え、紙パックを受け取った。



「ありがとう」