夏色の初恋を君にあげる(野いちごジュニア文庫版)



多分聞かない方がいい――。


さっきとは打って変わっておちゃらけた彼の声音を聞けば、そんなことは明白なのに、足が一歩先に進む力をなくした。

意識が勝手にそちらに向いてしまう。



「えっ! お前、高野姉のこと好きだったっけ」



「そんなわけあるかよ」



「でも告ったんだろ?」



「雅ちゃんとお近づきになるために決まってるじゃん、ばーか。高野姉と付き合えば、雅ちゃんと接点作れるし。雅ちゃんさえゲットできれば、姉の方なんて即ポイよ」



「うわー、ゲスいわー」



「それなのになぜか俺がフラれてるし」



「ははっ、ウケる」



「――っ……」



頭を殴打されたような衝撃だった。


ドクドクと、感じたことがないほど心臓が嫌な音を立てて暴れる。

体の芯から指先にかけて急激に体温が引いていく。吐き気がする。



……全部うそだった。


私は利用されただけ。

しかも、あんな冷たい感情を持って。



まるで存在を丸ごと否定されたような気がした。



こうなることは少し考えれば分かった。


それなのにどうして信じてしまったんだろう。