夏色の初恋を君にあげる(野いちごジュニア文庫版)



「一目惚れしちゃってさ……。もしよかったら付き合ってくれない?」



まっすぐに私を見つめ、彼が言う。



まさか、自分にこんな日が訪れるなんて。


だって、告白されるのがずっと憧れだったのだ。



少し前までならこんな機会もう二度とないと、告白を受けていたかもしれない。

――だけど、今は。



「ごめんなさい。好きな人がいるので……」



そう言って、私は静かに頭を下げた。



由良くんという好きな人がいるから、気持ちには応えられない。


叶わない恋だとは分かっていても、別のだれかを想ったまま付き合うのは、告白してくれた彼に対して不誠実だと思った。



「そっか……。分かった」



「ごめんなさい、ありがとう」



申し訳なさを感じながらも、こんな私を見つけて好きになってくれた、そのことに胸がいっぱいでお礼の言葉が自然とこぼれる。



「それじゃあ、俺はこれで」



眉を下げて人の良さそうな笑みを浮かべ、彼が去って行く。



その後ろ姿を見つめ、私はきゅっと下唇を噛みしめた。


こうして初の告白は、胸にほんのり切ない痛みを残したのだった。