クールな君と甘いキャンディ(野いちごジュニア文庫版)

 そんなふうに口々に噂されて、気がつけば、有村くんには完全に不良のようなイメージがついてしまっていた。


 みんな彼にビビってしまい、なかなか近寄ろうとしない。


 そのうえ有村くん自身も、自分から積極的にみんなと絡もうとするタイプではなかったので、なんとなく彼はいつも、クラスの中で浮いている感じだった。


 そして当初、私もそんな彼のことをみんなと同じように怖いと思っていて、同じクラスだけど、関わることはないまま毎日が過ぎていった。



 そんなある日のこと。


 放課後、下駄箱で靴を履き替え昇降口を出ようとしたら、パラパラと雨が降っていた。予報では夕方から雨になるとは言っていたけれど、こんなに早く降るなんて。


 そんなことを思いながら、傘立てから傘を持ってきて広げる。すると、その時ふと、一人の男の子が視界に入った。


 ……有村くんだ。


 彼はカバンを肩にかけたまま、ボーっと一人、外を見つめながら立っている。


 不思議なことに、そのままなかなか帰ろうとしない。誰か待っているのかな。


 少し気になったけれど、元から男子とあまり話さない私には、とてもじゃないけど話しかける勇気などなくて、そのまま傘を差し、歩き出した。