クールな君と甘いキャンディ(野いちごジュニア文庫版)

 それは、桜舞い散る入学式の日の出来事だった。


 クラスのほぼ全員が揃い着席している状態で、先生が入学式についての説明を行う中、ガラッと教室のドアが開いた。


 そこに遅れて入ってきた、一人の男子生徒。背が高く、スタイルが良くて、髪が少し茶色っぽくて、端正な顔立ちをしたイケメン。


 だけど彼の顔をよく見ると、なぜか片目に殴られたみたいな青いアザができていて。クラスのみんながギョッとした顔で彼を見ていた。


 その彼が、有村瑞稀くんだった。


 入学初日から一人だけ遅刻してきたというのもあり、クラスのみんなに強烈な印象を残してくれた有村くん。


 おまけに彼は目つきが悪く、愛想もあまりよくなくて、入学式の後に行われた自己紹介でもほとんど喋らず。

 そんな感じだったから、みんなてっきり彼のことを、怖い人だと思ったらしい。


「あのアザ、誰かとケンカでもしてきたのかな……」


「実は不良だったりして」


「目つき怖いし、絶対ケンカ強そう」