クールな君と甘いキャンディ(野いちごジュニア文庫版)

 思いがけない提案をされて、ドキッとする。


「で、でも……っ」


「いいから」


 戸惑う私に有村くんはそう告げると、チョークを持って黒板の端まで行き、さっそく問三の難しい問題をスラスラと解き始める。


 その瞬間、どこからともなく「おぉっ」なんて歓声が起こった。


 すごい。あんな難しい問題を、いとも簡単に解いてしまうなんて。


 だけど、それを見た宮野先生が、少し困った顔で有村くんに声をかける。


「あれ? 有村、お前には問二の問題を当てたはずなんだが……」


 すると、すでに問題の答えを書き終えた有村くんは、ケロッとした顔で答えた。


「え、そうでしたっけ。すいません、間違えてこっち解いちゃいました」


 そんな彼の姿を見て、思わず胸が熱くなる。


 ねぇ、今のはウソだよね? 私のためにとぼけてくれたんだよね? 私がみんなの前で恥をかかないように……。


 有村くん、優しすぎるよ。どうしていつも、さりげなく助けてくれるの?


 結局彼のおかげで私は問二の問題を解くことになり、その場では事なきを得たのだけれど、内心涙が出そうなくらい感激していた。


 やっぱり、好き……。こんなことされたら、どんどん好きになっちゃうよ。