クールな君と甘いキャンディ(野いちごジュニア文庫版)

 彼は、ベッドの前のローテーブルの上にアイスティーを二つ置くと、私の隣に座る。


 突然の部屋で二人きりという状況に、一気に心拍数が上がってしまった。



「なんか、気を使わせてごめんね。着替えを貸してもらったうえに、わざわざ飲み物まで……」


 私がそう言って、おそるおそる彼のほうを向くと、有村くんは首を横に振った。


「いや、気にすんなよ。もとはといえばうちの弟が迷惑かけたんだし。謝らなきゃいけないのは、こっちのほうだから」


「そ、そんなっ。べつにわざとじゃないし、私は全然平気だよ。あ、それより、祐飛くんは?」


 そういえば、祐飛くんは何してるんだろうと思い、聞いてみる。


「あぁ、あいつならリビングでテレビ見てる。ちょうど好きなアニメやってる時間だから」


「そっかぁ。祐飛くんって、何歳なの?」


「五歳。保育園に通ってるよ」


「そうなんだ。すごく年が離れてるんだね」


「あぁ。一緒にいると時々、『親子?』とか言われる」


「えぇっ!」


「母親が残業で遅くなる時は、たまに俺が保育園の迎え頼まれてて。今日もその帰りだったんだ」