クールな君と甘いキャンディ(野いちごジュニア文庫版)

「祐飛、お前、勝手にチョロチョロすんなって言っただろ」


 有村くんはそう言って、男の子の両肩を両手でガシッと捕まえる。すると男の子はキョトンとした顔で。



「僕、手を洗おうと思ったんだよ。そしたら水がいっぱい出てきて、お姉ちゃんにかかっちゃった」


「はっ? ウソだろっ」


 言われて私のほうを振り向くなり、ギョッとした顔をする有村くん。


「……って、誰かと思えば水沢じゃん! マジかよ。ごめん……」


 そしてすごく申し訳なさそうな顔で謝ってきた。


「あ、ううん。別に私は大丈夫だよっ」


「あの、こいつ実は、俺の弟で……」


 続いて彼の口から出てきた言葉に、目を丸くする私。


「えっ、ウソッ! 弟なの?」


 有村くん、こんな年の離れた弟がいたの? 全然知らなかった……。


「あぁ。俺がうっかり目を離したもんだから。迷惑かけてごめんな」


 有村くんはそう言って腰に巻いていた自分のカーディガンを外すと、私の肩にそっとかけてくれる。そして、私の腕を片手でギュッと掴むと、こう言った。


「とりあえず、着替え貸すから来て。俺ん家、ここからすぐ近くだから」