クールな君と甘いキャンディ(野いちごジュニア文庫版)

 そう思い立って公園に入ると、小さな男の子が一人、砂場で遊んでいる。


 私はそのそばを通り過ぎて水道があるところまで行き、すぐに手をキレイに洗った。


 キュッと蛇口の水を止め、ハンカチで手を拭く。すると、その時なぜか横から視線を感じて。


 何かと思ったら、先ほど砂場で遊んでいた男の子が、すぐそばに立って私のことをじっと見つめていた。


 あれ、さっきの子……。


「僕も手、洗いたい!」


 男の子はそう口にすると、サッと水道に手を伸ばす。そして、あろうことか、横の蛇口ではなく、上についている水飲み用の蛇口をひねった。


 その瞬間、ブシャーッと上に向かって飛び散る水。そしてその水は、見事に私の上半身にかかって。


「ひゃあっ!」


 私は慌てて水を止めたけれど、気がついたら制服のシャツが半分濡れてしまっていた。


 あちゃーっ。どうしよう……。びしょ濡れだ。


 すると、そこに誰かが慌てた様子で駆け寄ってきて。


「祐飛っ!」


 聞き覚えのある声にドキッとして振り返ったら、そこにいたのは……。


「え、有村くん!?」


 なんと、制服姿の有村くんだった。


 ウソ。ちょっと待って。どうして彼がここに……。