クールな君と甘いキャンディ(野いちごジュニア文庫版)

 確かに体育が始まった時からずっと髪に付けてたけど、それに気づくなんてすごいなぁ。


 そう思って有村くんの顔を見上げたら、彼が真顔でボソッと呟く。


「水沢のことはいつも見てるから、俺」


「えっ……」


 思いがけない言葉に、ドクンと心臓が飛び跳ねた。


 ん? ちょっと待って。いつも見てるって……それは、どういう意味だろう?


 ――ピーッ!


 そしたらその時、ちょうどバレーの一回目の試合終了の笛が鳴った。


「あ、試合終わっちゃった」


 次はいよいよ私たちの出番だ。行かなくちゃ。


「次、出るの?」


 有村くんが私に尋ねる。


「うん」


 頷いたら、彼は優しく微笑んでくれた。


「そっか。頑張れ」


 その笑顔にまた、ドキドキする。


 なんだか今日は私、有村くんにドキドキしてばっかりだ。


 それにしても、さっきの言葉……。彼は一体、どんな気持ちであんなことを言ったんだろう。

『いつも見てるから』だなんて。


 胸の奥がくすぐったくて、変な感じ。鼓動がおさまる気配がない。


 だけど、有村くんが見ていてくれる、そう思ったらそれだけで頑張れそうな気がした。