クールな君と甘いキャンディ(野いちごジュニア文庫版)

 驚いて振り向くと、そこに立っていたのは、有村くん。


ついさっきまで女の子たちに囲まれていたはずなのに。


「あ、有村くんっ。どうしたの?」


 少しドキドキしながら返したら、彼は手に持った何かを私の目の前に差し出して。


「これ、水沢のじゃねぇの?」


 見たらそれはなんと、私が落としたはずのシュシュだった。


「わぁっ、ありがとう! これ探してたの」


「やっぱり。なんかさっき、床に落ちてたから拾った」


 まさか、有村くんがこれを拾ってくれていただなんて。


 すぐさま彼の手からシュシュを受け取り、再び礼を言う。


「よかった。なくしたかと思って焦っちゃった。見つけてくれて本当にありがとう」


「どういたしまして」


 だけどそこで、ホッとすると同時に、少し不思議に思った。


「あ、でも、よくこのシュシュが私のだってわかったね?」


 そうだ。どうして有村くんは、これが私のだってわかったんだろう。名前なんて書いてないのに。


「あぁ、だって、水沢がさっきこれ付けてたの見たし」


「そ、そっかぁ」