クールな君と甘いキャンディ(野いちごジュニア文庫版)

 明日香ちゃんからしても、さっきの彼の活躍っぷりは衝撃的だったみたい。


 私もびっくりしたけど、こんなに急に人気が出てしまうとは思ってもみなかった。


 まぁ、有村くんはもとからイケメンだし、普通にしてたらモテるタイプだとは思うけど、人の態度って、案外コロッと変わるものなんだなぁ。


 そんなことを思いながら、今度は女子のバレーの試合を見学する。これが終わったら次は、自分チームの出番だから、気を引き締めなくちゃ。


 念のため髪の毛を結びなおそうと、後ろの髪に手を伸ばす。すると次の瞬間、あることに気がついて、ハッとした。


 ……あれ? シュシュが、ない。


 普段は下ろしている髪を、体育の時は一つ結びにしている私。


黒のヘアゴムで縛ったあとに、今日はその上からシュシュを付けていたんだけど、どこかで落としちゃったのかな?


 慌てて体育館内をキョロキョロと見回して探す。


 だけどどんなに探し回っても、床に落ちている気配はなく、見つからない。


 やだ、どうしよう……。体育館に来る前に落としたのかな。せっかく気に入っていたシュシュだったのに。


 どうして自分はこう、すぐにドジをやらかしてしまうんだろう。


 シュンとした気持ちになっていたら、ふと横から声をかけられた。


「おい、水沢」