クールな君と甘いキャンディ(野いちごジュニア文庫版)

「あぁ、体育かぁ。バレー嫌だなぁ」


 明日香ちゃんが、体育館の隅でボソッと呟く。


 六月になって、これまで外で行われていた体育の授業が体育館での授業に切り替わった。種目も今までドッジボールとかサッカーだったのが、今度は体育館を片面ずつ使って、男子がバスケ、女子はバレーの試合をすることになっている。


 明日香ちゃんも私も運動が苦手なので、体育の時間はなんとなく憂鬱で、今日も二人してテンションが低かった。


「きゃははっ」


「キャーッ、マジでー?」


 すると、そんな私たちのそばを、派手な女の子たちがキャッキャ騒ぎながら通り過ぎていく。クラスメイトの里奈ちゃん、沙也加ちゃん、美緒ちゃんの三人組だ。


 彼女たちはうちのクラスで一番目立つ女子のグループで、体育の授業が楽しみなのか、さっきからすごくはしゃいでいる。


「男子の試合見れるの楽しみだね!」


「バスケやってる姿ってカッコいいもんね」


「松山くんとか絶対上手そう!」


 そんな会話が聞こえてきて、なるほど、体育館での授業はそんな楽しみ方もあるのか、なんて思ってしまった。


うちのクラスの男子が体育をしているところって、そういえばまだちゃんと見たことがないな。