クールな君と甘いキャンディ(野いちごジュニア文庫版)

 だけど、その時ふと目にした彼の笑った顔が、すごく優しくて。


 思わずトクンと胸が高鳴った。


 有村くんって、笑ったらこんな顔するんだ……。


 そういえば初めて見たな。笑ったところ。


 普段、目つきが悪くて怖く見えるのに、こうして笑うと、少年みたいでちょっと可愛いかも。なんだかまたイメージが変わっちゃうな。


 そんなことをあれこれ考えながら、あらためてお礼を言う。


「あの、でも、本当にありがとうっ」


 ぺこりと頭を下げたら、彼は微笑んでくれた。


「いや、全然。水沢が昼飯抜きにならなくてよかった」


「うん。ほんと、有村くんのおかげだよ」


 というか私、有村くんといつのまにか普通に話してる。彼も普通に話してくれてるし。


そこにもう怖いとか、苦手だなんて感情は一切ない。


 やっぱり有村くんは、すごく優しい人だ。そして、意外にもすごく親切な人。


 なんだかあのキャンディをもらった時よりも、彼が身近な存在になったような気がして。さらに彼との距離が近づいたような気がして。


少し嬉しかった。