クールな君と甘いキャンディ(野いちごジュニア文庫版)

 でも、後ろにはたくさん人が並んでるし、おばちゃんだって忙しいのに、一人だけそんなこと頼めないよね。


うーん、仕方ない。


「す、すいません。あの、財布を忘れちゃって……。これ、キャンセル……」


 泣く泣くキャンセルしようと思い、おばちゃんに小さく声を掛ける。


 そんな時、斜め後ろからスッと誰かの手が伸びてきて、私のパンのカゴを掴んだ。


 そしてその人は、割り込むように私の前まで来ると、一言。


「すいません、これも一緒に会計してください」


 えっ?


 一瞬何が起こったのかと思う。おそるおそる、その人の顔を見上げる。


 すると、そこに立っていたのはなんと、あの有村くんだった。


 えっ、ウソ。なんで……。


 驚きのあまり、目を見開き呆然とする私。


 有村くんは、ササッと自分のパンと私のパンを一緒に会計すると、パンの袋を受け取り、私の腕をギュッと掴む。


そして、強引に私をその人混みから連れ出した。


「え、あ、あのっ……」