クールな君と甘いキャンディ(野いちごジュニア文庫版)

 小さなカゴを手に取り、中に焼きそばパンとサンドイッチを入れ、カウンターの上に差し出す私。


 よかった、やっと買える。


「えっと、これください」


「はい。四五〇円ねー!」


 購買のレジのおばちゃんが、元気な声で合計金額を口にする。


 だけどそこで、私がさっそくお金を払おうとしたら、ふとあることに気がついて、ハッとした。


 ……あれ? ない。


 ウソでしょ。財布が、ない!


 慌てて購買まで走ってきたから今まで気づかなかったけれど、なんと私、財布を持ってくるのを忘れてしまったらしい。手ぶらで買い物に来るなんて、バカにもほどがある。


 一気に頭の中が真っ白になった。


「あ、えっと、あの……」


 どうしよう。これは頼めば、取り置きとかしてもらえるのかな?