君が可愛すぎるから(野いちごジュニア文庫版)




たぶん、いきなり理由も言わず逃げるように去って行ったわたしの行動は、凪くんたちからしてみれば意味がわからないと思う。



一瞬、引きとめる凪くんの声が聞こえたけれど、無視して全力で走った。


浴衣と下駄のせいで走りにくいのに、夢中で走っていたら、そんなこともう気にならなくて。


代わりに視界を揺らす涙のほうが気になって仕方ない。



何度拭っても、視界はクリアにならない。


息が苦しい、胸も苦しい。


この苦しさは走ったからではなく、凪くんを想っての苦しさだと思うと、さらに締め付けるように胸が圧迫される。



いっそのこと、この苦しさや涙は全て、なかったことにしてしまいたいくらい――。