「有栖ちゃんは小柄だから、これだけ人がいると大変だね」
そう言いながら、わたしが苦しくならないように、いつも立てる場所をさりげなく作ってくれるのが凪くんの優しいところ。
「えっと、いつもごめんね」
「ん、いいよ。有栖ちゃん見てると危なっかしくて放っておけないし。守ってあげたくなるんだよね」
こういうことをさらっと言わないでほしい。すごく心臓に悪いから。
一瞬だけ胸がキュッと縮まって、ドキッとしたのは絶対に秘密。
凪くんは、いつも必ずと言っていいくらい、毎朝この時間の電車に乗るんだ。
だから、わたしもその時間に合わせていつも家を出ている。
少しでも凪くんと一緒にいる時間を増やしたいから。
毎朝、ほんの少しの時間だけでも話すことができて、朝いちばん初めに顔を合わせることができて。
ささいなことだけど、密かに凪くんに片想いをしているわたしにとっては、二人で話せる時間がとても大切だったりする。

