大事なセリフはもっとゆっくり、余韻をもたせて言ってもいいんだ。

動作も大きくしないと観客席まで伝わらない。


ワルツも、もっとかろやかに優雅にできたら素敵だろうな。

王子様に見つけてもらってシンデレラが主役になるすごく大切な場面だもん。


そのためには……。



「ゆきちゃん?足をバタバタさせてどうしたの?」

「バタバタしてました!?」

「え、してたような気がしたけど違うの?」



ステップを踏んでいたつもりだったのに……!

ただバタバタしているだけに見えたんだ。


って、いまはお仕事中だ。
接客に集中しなきゃ。


幸いお客様は空野さんしかいなかったからよかったけど。

空野さんも久しぶりに来てくれたのに上の空だった。



「も、申し訳ございません。ちょっと心ここにあらずな状態でした」

「いや、そんなかしこまらなくてもいいよ。おれとゆきちゃんの仲じゃん」


どうゆう仲なのだろうか。
少し疑問に思ったけど、口には出さない。