「授業始めるぞー、教科書だせー」
数学の先生が入ってきて、ざわついていた教室は静かになった。
素直に教科書を出したあと、嫌いな数学が始まることに小さくため息を吐く。
「ねみぃー」
柏木くんが、隣でブツブツ文句を言っている。
なんか、右隣に意識が集中して授業が耳に入る気がしない。
これからこの席で大丈夫かな、私……。
ブブブ
「…?」
ポケットでスマホが震えた気がして、こっそり机の下で盗み見る。
『今日二人で帰らない?』
若瀬くんから届いたメッセージは、一時間目が始まったばかりなのにもう帰りの話だ。
二人で帰る。
いつもは柏木くんと陽菜もいれて、四人でなんとなく帰るのが日課だけど。
二人で帰る。
二人で……
「スマホしまってくださーい」
「!」
聞こえた声に体がビクッと揺れた。
一瞬先生かと思ったけれど、どう考えても今のは右隣から聞こえた声だ。
チラッと隣を見てみると、暇そうに肘をついてこちらを見ている柏木くんと目が合った。
「なに、彼氏とイチャイチャしてんの?」
授業を受ける気がない態度で、柏木くんは私の返答を待っている。
「別に、柏木くんに関係ないでしょ」
じっと見られている動揺から、可愛くない返事が飛び出した。
「まぁ確かに、関係ねぇか」


