やがて春が来るまでの、僕らの話。




資料室……

それはいつもみんなでお弁当を食べていた、あの部屋だ。


「じゃ、俺これから志月くんと密会だから。まったねー」

「…柏木く、」

「負けんじゃねぇぞ」

「、…」



そう言って教室を出て行く間際、

柏木くんが廊下の先のなにかを見て笑ったあと……


ガラガラって、ドアを閉めた。




「、…」



全然、なにも言えなかった。


ありがとうもごめんねも、なにも言わせてくれなかった。



柏木くんが今生きていること。


それがもし、私といた時間によって生まれたものなら、私がいたことに意味はある?



彼の傍で生きた時間に、


どれだけの意味があったのかな……




「、…ッ、……、、」




体の力が抜けるように座り込んだら、余計に涙が溢れてきた。




ねぇ柏木くん。


私はただ、柏木くんに毎日を生きていてほしかったんだよ。


昔みたいに、笑っていてほしかったんだよ。



きっと私は、笑っている柏木くんが大好きだったから……




「、…ッ、、……、」



座り込む床に、未だに涙がポタポタ落ちる。


確か前にもこんなことがあったなって、頭のどこかで思い出す。



この教室で、座り込んで泣いた記憶……


クラスの女子たちに散々意地悪なことを言われて、チャイムが鳴って、



キーンコーンカーンコーン



そう、こんな風にチャイムが鳴って。


静まり返った校内で、一人で泣き続けていたら、



ガラガラガラ


そうだ、こんな風にドアが開く音が聞こえたんだ。




───“ハナエちゃん?さっきぶつかった時これ落としてったんだけど、”




開いたドアから入って来た人は、あの時、泣いている私の前にすぐにしゃがみ込んでくれた。




「…ハナエちゃん?」

「、…ッ、……、…」

「…どうしたの?」



思わず笑いそうになったのは、あの時と同じだったから。




───“どうしたの?”




律くんは、なにも変わってないんだね。



「あれ、なんか昔も同じことあったような…」

「、…ッ……ふふ」



しゃがみ込んだ律くんも記憶を辿っているから、私は泣きながら笑ってた。