やがて春が来るまでの、僕らの話。




ガラガラガラ、


懐かしさで熱くなった胸のまま、教室のドアを開けた。



「あ、」


開けた中にはハナエがいて、外を見ていたのか、窓から振り向くように俺を見た。


「早くね?」

「え、だって何時とか言われてないし、待たせたら悪いなーって」

「なに、そんなに俺に会いたかったの?」

「人の話、聞いてないね」

「クハハ」



教室へ入ったその先で、懐かしい席に座り込む。



「俺、ここだったなー」



一番後ろの、窓際から二番目。

ここはハナエの隣の席だった。



「柏木くん、いつもちょっかいかけてきてたよね」

「仕方ねぇじゃん、ハナエのこと好きだったんだから」

「え…」



陽菜がいたこの場所で、ハナエを好きだった、なんて。

ここにいたあの頃は、こんな言葉を言う日が来るなんて思いもしなかった。