やがて春が来るまでの、僕らの話。




「お前一番関係ねぇだろ」

「だって誰もしようとしないし」

「はは、いんじゃない?」


そう言って笑った律くんの声を確認したあと、杉内はお墓の前に立って、手を合わせて目を閉じた。


「陽菜ちゃん。あ、いや、友達だから陽菜、だね」

「だから友達じゃねぇだろって」

「俺ね、一回だけ会ったことあるよ、陽菜に。夢の中でだけどね」

「……」

「あのときの約束、俺、ちゃんと守ったよ」

「…約束?」

「まぁ厳密に言うと、俺はなにもできなかったけど。でも俺なりにできることはした」

「………」



手を合わせてた杉内が、


多分目を開けて、空を見て笑った。




「約束通り、親友の傍にずっといたよ!」



「、」




───“関係あんだろ!俺、カッシーの親友だろ!”

───“辛いなら言えよ!死にたいなら言えよ!俺なんでも聞くから、一緒に悩むから!一緒に考えるから!”

───“知らないの?親友って気づいたらなってるんだよ”

───“お前、こんないい親友持って幸せなんだからな!”




「親友の命、俺なにり守ったよ、陽菜!」

「……クッ…、」

「?」

「はは、あはははっ」

「はぁ!?おま、なに笑ってんだよ!」

「ちょ、イタイイタイイタイイタイ!」


振り向いた杉内が、笑ってる俺を見て首に技をかけてくる。


それでも笑いが止まんない。


だっていい加減にしてくれよ。


まじでいい加減にしろよ。


どんだけいい奴なんだよ。


信じらんねぇよ。


だって俺だよ?


迷惑掛けまくりで素直じゃなくてひねくれてる俺の親友が、こんなにいい奴だなんて。



俺、まじでどんだけ幸せ者だよ……