やがて春が来るまでの、僕らの話。


<柏木side>



十分後、陽菜のお墓に無事到着した。

持ってきた花を添え終わったところで、なんとなく全員が並んで立ってる。


「ちょっとあんたたち、陽菜に話しかけてあげなさいよ」

「なんで光男が偉そうに陽菜を呼び捨てしてんだよ」

「私はあんたたちの友達なの。てことは陽菜も私の友達ってことじゃない」

「なんだよその理屈」


陽菜の前で光男がわけわかんねぇことを言うから、俺は笑った。


「じゃあ俺も陽菜の友達だね!」

「てことは俺もか?」


あーあ、観光気分の二人もふざけて笑ってる。

お気楽なのか冗談なのか、それともまじでそう思ってるのか。


まぁこの人たちの場合、本気っぽい気もするけどね。



「ねぇ、話しかけるって……なにを?」


いつもはサバサバしてるむっちの声が、今はさすがに辛気臭い。

でも確かに、墓参りに来たはいいけど、こうも大人数だとなにをしていいのかわかんねぇ。


線香をあげて手を合わす。

それでいいんだろうけど……


「じゃあ俺が最初にお参りしていい?」


カラッとした杉内の声が、冬の空に響いた。