やがて春が来るまでの、僕らの話。




今からあの冬の続きが始まるような、そんな感覚に襲われて……

制服姿のみんなが、目の前に浮かんで見えた。



違う、現実はそっちじゃない。


思い出の世界に逃げちゃダメ。


そう自分に言い聞かせるのに……




“ハナエー、ひでの家に遊びに行こー!”




「、」



道の向こうに、陽菜がいる。


陽菜が笑って、私を呼んでいる。




“あー寒っみぃ。なに、来ねぇんなら置いてくよ?”




制服姿の柏木くんが、笑ってる。




“ハナエ、なんで突っ立ってんだよ。行くぞ”




若瀬くんが、私を連れていく。




「、」




ねぇ、私は、


そっちへ行けば、救われる…?



だったら私、このままみんなと、



「ハナエちゃん?」

「、…」



律くんの声に、目の前の景色が現実に戻った。



「あ、あれ……私今、陽菜たちと」

「え?」

「、…私……」

「……」

「、、……ッ、…、、」





現実はこんなにも悲しいのに。


こんなにも苦しいのに。


それなのに、思い出の世界に逃げることも同じくらい苦しい。