やがて春が来るまでの、僕らの話。


<ハナエside>



八年ぶりに訪れた、雪の降る小さな町。

見渡す景色の中には柏木くんがいて、若瀬くんもいて、律くんもいて、あの頃となにも変わらない。


変わらないように、見えるのに……



ねぇ、

この町に陽菜がいないのが、まるで嘘みたいにあの頃と変わらないよ。


学校に行けば会えるような、


電話を掛ければ繋がるような、


今すぐ、道端でバッタリ出会うような、


陽菜がこの町のどこかにちゃんといる気がしてしまうのは、


陽菜がいなくなってからのこの町を、私が知らないから…?



「、…」



踏みしめる雪が八年前と同じ音を出す。

見える町並みがあの頃の記憶とキレイに重なる。


何年経っても薄れることのなかった、この町の思い出。


どんなに時が流れても、どんなに大人になっても、


あの頃の、高校生の頃みたいにずっと、頭の中ではずっと、ずっとずっとずっと、


どんなに消そうと頑張ったって、いつもずっと、頭の中はこの町のことばっかりだった。



今だって、ずっと……





“ハナエー!”





「、…」




陽菜の声が聞こえた気がして、立ち止まる。