やがて春が来るまでの、僕らの話。







「ねぇ、思ったより寒くないね?」

「なんか今日暖かい。気温何度なんだろう?」

「俺は十分寒ぃぞ」


墓地に向かって歩く景色は真っ白で、太陽の光が雪に反射して目を開けてるのがきつくなる。


「眩しくって前が見えないわ~。ヒデトどこ~?」

「ヒデトは光男の右にいます」

「これかしら~?」

「ちょ、カッシー嘘つくなって。みっちゃん、ヒデトはみっちゃんの左!」


みっちゃんに絡められた腕は力強くて、超痛い。

だけどカッシーが左にいるって聞いた途端、その手は呆気なく離れていった。



「ハナエ、大丈夫…?」

「、うん」


後ろを歩くむっちとハナエちゃんの会話に、どうしたって耳を寄せてしまう。


「私もね、実は初めてなんだ…」

「ん?」

「陽菜のお墓行くの、初めてなの…」

「そう、なの…?」

「うん。ずっと怖くて、避けてたんだ。……私はハナエみたいに親友でいたわけじゃないけど、それでも陽菜とは幼稚園から一緒だったから」

「、…」

「陽菜がいない現実を、実感するのが怖かった…」



俺も同じだ。

陽菜がいなくなった現実は未だに曖昧で、まるで夢の中にいるみたいにふわふわしてる。


だけどきっと今日で、それも終わる。


いや、終わらせる。


陽菜はいない。


その現実を、俺たちはみんなで受け止めないといけないから。



八年も掛かっちゃったけど、でも大丈夫。



きっと今日、全てが現実になる。