やがて春が来るまでの、僕らの話。







飛行機に乗ること約一時間半。

降り立ったのは地元近くの空港で、そこから今度はバスに乗る。


「やば!雪、めっちゃやば!」


バスの窓にへばりつく杉内が、興奮してて恥ずかしい。

地元の乗客に思いっきり笑われてるの、見えてないのか?


なんてね。

楽しそうな杉内に、さっきからずっと救われてる俺がいる。

だって本当は、久しぶりに見る雪にしっかり重いもんを感じてるから。


あの頃は、こんな真っ白い世界が俺たちにとっては当たり前だったのにな……



「そうだ、雪だるま作ってみたい!」

「、…」



杉内の声に、否応なしにあの日の光景が頭を過ぎる……



───“雪だるま作ろー!”

───“ちょ、それ雪合戦になってるから”



「作ったよね、雪だるま。昔みんなで」


隣に座る志月が、思い出を懐かしむみたいに笑ってる。

そっか、こいつはあの日のことをちゃんと思い出に出来てるんだって、ホッとして。

じゃああの二人はどうだろうって、斜め後ろに座るカッシーたちを見てみたら……



“へーき?”


ハナエちゃんにそう聞いているカッシーがいた。


少しだけ強くなったのか、そんな姿にやっぱり俺は安堵した。



「天気、いーね」


窓の外を眺める志月の視線を追って、空を見上げる。


八年前の悲劇を包み隠すくらいの青空が、

真っ白な雪に反射していて、眩しい……