やがて春が来るまでの、僕らの話。




「おかげで大事な弟の大切さ、改めて実感したんじゃない?」

「……は?」


カッシーの声に、伏せかけていた視線が思わず上がる。


「会えない時間が愛を大きくするって言うしね」

「……」

「でもまぁ、愛が大きくなったのは弟だって同じだったけど」

「え…」

「どれだけ律くんに寄りかかってたか、どれだけ大きな存在だったか、離れてみて初めて気づくことができました」

「………」



そこまで言うとカッシーは、視線を外してふっと笑った。




「兄離れ、しなきゃなぁ」



笑ってくれるカッシーに、心が軽くなっていく。



「じゃあ律くんは、弟離れだね!」



杉内のその言葉に、笑えてる自分に気づいた。


弟離れ、か……


見捨てても尚こいつらのことばっか考えてた俺に、できるのかな、そんなこと。


でもまぁ、できなくてもいいかって。


だってカッシーが言うように、離れてみて気づくことはあまりに多すぎたから。


こいつらの大切さ。


自分の不器用さ。


俺がもっと器用だったら、こいつらをちゃんと守ってやれたのにって。


俺がもっと器用だったら、自分のことだってもっと考えてやれたのにって。


……なんて考えちゃう時点で、きっと不器用ってことなんだろうけど。


でも少しでも、「自分のこと」を考える。


そのことに気づけたからもう大丈夫。


頼られることや慕われること、そんなことに生き甲斐を感じて生きてる俺は、結局これからも、なんだかんだでこいつらの兄ちゃんやってくんだろうけど。


これからは少しだけ肩の力を抜いて、


少しだけ、自分のことも考えながら。


そんな風に過ごせればいいかな。



こいつらと、一緒に。