やがて春が来るまでの、僕らの話。




玄関に歩き出す俺に、カバンを持ったハナエが慌ててついてくる。


「違うことって、例えば?」

「腹がはち切れるほど唐揚げ食いたいとか、24時間ダラダラしたいとか」

「なにそれ」

「あとは、ハナエと結婚したいとか?」

「……」



なんてね。

そんなことを言ったら、ハナエはどんな顔すんのかなって。


楽しみ半分、恐怖半分で見てみたら。



「けっっっ」

「………」

「けっ!?」

「……。」



はぁーって大きなため息が出た。


なんなんだよその反応。

どっちなんだよ、その反応。


「別に今すぐの話じゃないから。いつになるのかわかんないけど、俺がもっと強くなって、ハナエをちゃんと支えられるような男になったら」

「………」



そんな未来が来たときは……



「お嫁さんに、してあげる」



なんてね。


でもそんな未来を想像するだけで、昨日よりちょっとだけ強くなれる気がすんだ。