やがて春が来るまでの、僕らの話。




「…私もトイレ」

「行ってらっしゃい」


まだ機嫌が悪いのか、いつもより低い声で素っ気なく言ったあと、ハナエが席を立って個室を出た。


つーかなんであいつまで不機嫌になってんの?



「……はぁ」

「余裕ないんだ?てか意外と嫉妬深いんだね、カッシーって」


他人事だと思って楽しそうに笑ってる志月くんが、悪魔に見える。

そんな悪魔にすら苛立って、目を細めて睨んだのにそれすらも楽しそうに笑われて。


「さっきからなにイラついてんだよ」

「……別に。」

「聞いてやってもいいけど?」

「………」


聞いてほしいわけじゃない。

俺の中でうまく消化できるなら、誰にも話したくなんてないのに。


だけど消化不良を起こしてるから、やっぱもう、聞いてもらうしかねぇのかな……