やがて春が来るまでの、僕らの話。


<柏木side>




「………」



個室の外で、二人の会話を聞いていた。

この間までの俺には、きっとこんな声すらも聞こえなかったんだろうなって。


だけど今ならちゃんと聞こえる。


「生きろ」って声が、


「生きよう」って声が、



俺の耳に、聞こえてくるんだ……




「…ねぇ、若瀬くん」




でも志月くん。

俺がこうして生きているのは、それはハナエのおかげじゃないよ。




「なに?」

「……」

「ハナエ?」

「……あの、ね」




生きていられるのは……





「……律くん、元気?」






それは絶対、律くんのおかげだ。