やがて春が来るまでの、僕らの話。




「どうなの、あれからカッシーの様子」

「うーん、たまに暗い顔したりもするけど」

「うん」

「でもね、ちょっとずつ前向きになってると思う」

「まじ?」

「まじまじ。よく笑ってくれるようになったの。柏木くん、毎日ちゃんと笑ってる」


それを聞いたら、なんかすごい嬉しくて。


「そっか」

「うん」


俺だけじゃなくて、天国で陽菜も笑ってくれてる気がした。


「それもこれも全部、ハナエのおかげじゃん」

「ん?」

「ハナエと住んでからでしょ、カッシーが少しずつ前向きになったのって」

「うーん、どうかな」

「気持ち的に落ち着いたんじゃない?お前が一緒にいてくれるから」


届いたおしぼりをなんとなく弄びながら、ハナエは視線を下げて笑った。


「きっと見えるようになったんだと思う」

「見える?」

「死にたい死にたいって、そればっかりだったときには見えてなかったものが、今は見え始めてるんだと思う」