やがて春が来るまでの、僕らの話。




「お疲れ。ごめんねデートの邪魔して」

「呼びつけたのは俺だけどね」

「そう、カッシーにしつこく呼ばれたの」

「ええ……しつこい男は嫌われるよ?」

「うるせ。嫌いたきゃ嫌え」

「とか言って実際嫌われたらさ、こいつのことだからまた一騒動起こすよ」

「あはは、確かに」


俺の正面に座るハナエにメニューを差し出したあと、カッシーはもう一度「うるせ」って言いながら立ち上がった。


「どこ行くの?」

「便所」

「トイレって言って」

「おトイレ行ってきまーす」


立ち去って行くカッシーを、怪訝な顔で見送るハナエが面白くて。

まるで高校のときのこいつらが、今目の前にいるみたい。


仲がいいのか悪いのか。

そんなこいつらが、俺はずっと羨ましかったんだけどね。