やがて春が来るまでの、僕らの話。






<柏木side>



───昨夜。



「…律くん?」


夜、仕事が終わって会社を出たら、待ち伏せしてたのか律くんがスーツ姿で立っていた。


「おー」

「なにしてんの」

「ちょっと付き合ってよ」

「どこ」

「散歩」

「は?」



俺の返事なんて構わずに、歩き出す律くんに仕方なくついていく。



「つーかなにこれ、まじで散歩なんすけど」

「言ったじゃん、散歩って」


本気でブラブラするだけの道のりに、訳も分からず後ろを歩く。

なにを話すでもなく、なにを見るでもない夜の道は、いつの間にか賑やかな街を抜けていた。


これと言った会話のなかった道のりで、律くんがやっと話しだしたのは……

散歩を始めて、10分以上が経った頃だ。


「この前、ハナエとキスしたんだけどさー」

「……は?」


いやいやいや、なんの話しだって。

耳を塞ぐか舌打ちでもしたくなるような話題に、意味が分からな過ぎて相槌もままならない。


「いい感じだったのに、最後までできなかったの」

「………」


なに、悩み相談か?って。

だったら相談する相手間違ってるだろって、本気で耳を塞ぎたかった。