やがて春が来るまでの、僕らの話。





<倉田side>




花火が消えた紺色の空は、なんでか無性に静かに見える。

きっともう、夏が終わるんだ。


微かに残る火薬の香りが、季節の終わりを告げてるみたいに風に乗って流れてくる……



「…律くん?」



石段に座りながら空を見る俺に届いたのは……

なんの迷いもなく好きだと思える、彼女の声だ。


見上げる夜空の下で、何度も陽菜に問いかけた。

これでいいんだよな?って。

俺、間違ってないよな?って。



「…律くん」



ハナエが悲しい気持ちでいるのが、名前を呼ぶ声だけでわかっちゃうのはなんでかな。


一緒に暮らす時間の中で、いつの間にかそんなことまでわかるようになってたのかな。



「、…ッ……」

「泣くの早いよ」



顔を見なくたって泣いてるってわかるくらい、俺たち、一緒にいたのにね。


なんでかな。


こんな結末を、望んでいたわけじゃないのにな……


でもきっとこれが、俺にできる、2人への最後の後押しだから。